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冒険 & カヌーAdventure & Canoe

9 作製そして完成

夏休みの木工室。参加する生徒は毎回4~5人程度だが、取り組む顔は日ごろの授業では見たことがないほど真剣だった。 集まりの悪い生徒たちには、島崎さんが毎朝電話をかけて呼び出した。自由参加なので、 部活動にきて通りがかりに興味をもった生徒にはその場で参加させた。 エアコンのきかない木工室は暑く、みな汗だくになりながら作業を続けた。 そんな中で、生徒たちと新田さんや島崎さんとの会話もはずむ。冷たい飲み物を差し入れにやってきた母親が 息子の働く姿をうれしそうに眺めている。気持ちよく汗をかいてようやく半日の仕事を終えるころに、 アウトドアの名人の島崎さんがキャンピング道具を駆使して中庭で飯を炊いた。 焼いた鮭や貝を混ぜ、おにぎりを作ってほおばるのだ。ダッチオーブンで作るご飯は抜群に旨い。 作業は島崎さんの指導で順調に進んでいくが、部品数が多いのでなかなか大変である。 しかも、ボンドが固まる時間を必要とするので、行程をゆっくり進めなければならない。 素人には厄介な作業の日が続いた。 あるとき父親の中で大工をしている人に電話で協力を頼んでみた。すると喜んで参加してくれた。 何度か息子の生活指導でのことで来校した父親であるが、思う存分に腕をふるってくれたので、 みるみるうちに作業がはかどった。作業後に校長室でカツ丼を食べつつ歓談しながら、 このように校長と父親が仲良くすることこそが子どもの健全育成につながっていくのだろうと思った。 そのような週2~3日の作業を1か月続けて、8月の半ばにようやく、長さ4メートル、 幅1メートルの2人乗りのカヌーができあがった。防水のために船体にペンキを塗られたカヌーは、 中庭の緑濃い芝生の上で夏の日差しを浴びながら輝いた。作製に関わった生徒たちにより、 その船はサマールと名づけられた。次はいよいよキャンプである。
読売教育賞受賞『手作りカヌーで富士五湖横断』
1 全国ニュースで紹介されたカヌーの取り組み 2 校長着任時の学校の状況 3 荒廃の原因の考察
4 生徒と教職員の一体感のある学校を作りたい 5 若い技能主事と教育相談員の提案 6 校長室がキャンプ場に変身
7 プールでのデモンストレーション 8 カナディアンカヌーとは何か 9 作製そして完成
10 「西湖」の横断に成功 11 「特色ある教育活動予算」が認められる 12 学生ボランティアや卒業生も参加
13 ターゲットの生徒たちも参加する 14 マスコミの取材攻勢 15 グラスファイバー塗装に挑戦
16 盛大に「進水式」を開催 17 不登校学級の生徒たちが、「西湖」横断に成功 18 友情を確かめ合った「本栖湖」横断
19 卒業生が「山中湖」横断を断念 20 新入生が「山中湖」横断に成功 21 大雨の中「精進湖」横断に成功
22 ついに「富士五湖」完全制覇 23 荒れた学校の奇跡的な変容  
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冒険(カヌープロジェクト) ★ 2006年夏
カヌー製作編
★ 2006年夏
カヌー川下り編
★ 2007年夏
カヌー川下り編
★ 2008年夏
カヌーキャンプ
手作りカヌーで
富士五湖横断