冒険 & カヌーAdventure & Canoe
18 友情を確かめ合った「本栖湖」横断
11月、何とか励ましたいと思った生徒がいた。彼に必要なのは「自信」の回復だった。
そこである日、その少年を校長室に呼び出して誘った。「私と一緒に手作りカヌーで富士五湖を横断してみないか。
すごい冒険だよ。」と。彼の目は一瞬輝き、「やりたい。」と答えた。
次の日、私は彼の同級生たちを校長室に呼んで誘った。「一緒に行って彼を元気づけよう」と。彼らは深くうなずいた。
そして次の休日、私の車の屋根に一艇のカヌーを積み、6人の男子生徒を私と肥後教頭の2台の車に分乗させ、
新田さんを加えて3人の引率で富士山麓を目指した。行楽シーズンを終えた本栖湖の水面は静まりかえっていた。
彼らは交代しながら1時間かけて湖を往復した。私の言葉を忘れなかった同級生たちは友人に温かい声をかけ続けていた。
少年の声と表情はどんどん明るくなっていった。そして彼らは深い満足感を抱いて家路についた。
ただそれだけの話である。だがその少年が、学校には自分の存在を認めてくれる仲間がいることを実感したことは間違いない。