読書の旅の羅針盤

ここ「読書の旅の羅針盤」では、小金井市小金井第一中学校校長
「山本 修司」がお勧めする中学生に
読んでもらいたい本を100冊紹介する予定です。

なお、この紹介は「学校便り」に紹介されているもので、
山本校長の許可を頂き掲載しているものであります。



ナンバー 書籍名 著 者 コメントなど
:短時間で楽しめる本   ★★:じっくりと味わえる本   ★★★:ちょっと難しいが視野が広がり人生観が深まる本
 2008年3月13日分
001 坊っちゃん
(角川文庫他)
夏目漱石
★★(中級)
面白い。痛快である。一本気で正義感の強い坊ちゃんは、周りの人間とぶつかっては怒り狂っている。
愛すべき人物だが、かなりアブナイ。自分の近くにこんな人がいたら迷惑だ。
しかし世間に妥協しながら不本意な社会生活を営んでいる私たちは、そんな坊ちゃんだからこそ大きな拍手を贈りたくなるのだ。
久しぶりに読んで私 が感心したことがある。それは、下手な俳句を披露して得意がっている教頭の「赤シャツ」は
夏目漱石自身の一面をモデルにしているのではないかと感じたことだ。
つまり漱石は自分をも含めた日本人の不合理な慣習や偏狭な常識などへの痛烈な批判を込めてこの小説を書いたのだと思う。
だがほとんどの読者は、自分も批判の対象 になっているとは夢にも思わない。
青春時代に読んで坊ちゃんの生き方に共鳴し、大人になって俗塵(ぞくじん)にまみれたころにもう一度読んで「やられた」と反省する。
それが「坊っちゃん」の正しい味わい方ではないだろうか。
002 蜘蛛の糸・杜子春
(新潮文庫)
芥川龍之介
★(初級)
2 @「蜘蛛の糸」カンダタは下からよじ登ってくる者たちに叫んだ。「これは俺の蜘蛛の糸だ。下りろ!」すると・・・ 
 A「杜子春」どうしても仙人になりたい。だから目の前で母が鞭打たれていても知らん顔をするのだ。だが・・・ 
 B「魔術」魔術を身につける人間の資格は私欲を捨てることだ。果たして主人公にはそれがで きるか? 
 C「仙人」仙人にしてやるとだまされ、高い木の上から飛べと言われた男の運命は? 
 D「白」友達の危機を見捨てて逃げた犬の「白」は突然真っ黒な体になってしまった。飼い主から見捨てられた「白」の運命は?
 芥川龍之介は少年・少女向けの名作も残した。人間のエゴイズムを鋭く批判したこれらの作品集は現代っ子必読である。
ぜひ親子で一緒に読んでほしい。
003 セロ弾きのゴーシュ・グスコーブドリの伝記
(角川文庫)
宮沢賢治
★(初級)
 本校の3年生は、修学旅行で岩手県花巻市に行った。そこで農家に泊まって稲刈りをし、宮沢賢治記念館を見学した。
宮沢賢治は、教師・童話作家・農業指導者としてすべてのエネルギーを人々の幸福のために費やし37歳の若さで死んだ。
神様のような人だ。ぜひ彼の童話を読み、その純粋な魂に触れておきたい。
特に私は「グ スコーブドリの伝記」が好きだ。賢治自身の理想とした生き方(死に方)が描かれた作品だと思う。
004 ようこそ地球さん
(新潮文庫)
星 新一
★(初級)
 星新一はその生涯で、奇抜なアイディアのショートショート(超短編小説)を1000編も書いた。
彼の本は本屋の文庫本コーナーに何十冊も並んでいるし、学校図書館にもほとんどそろっている。どれも面白い。
中でも私は初期短編集である本書を推薦する。宇宙人が地球を訪問したり地球人が新しい星を開拓したりして、空想 の未来の世界を十分に楽しませてくれる。
そしてさらに、人類の存在する意味について思わず考えさせられてしまう。
そんな味わい深い短編がギッシリと詰まった作品集である。
005 地下鉄(メトロ)に乗って
(講談社文庫)
浅田次郎
★★(中級)
 小説の面白さを十分に味わうことができる秀作。エゴイストで思いやりのない父親を、息子の真次は憎んでいた。
だから父が築き上げた会社の後継ぎになることを拒否し、平凡なサラリーマンの道を選んだのだ。
しかしある夜、酔って地下鉄の階段を上がると、そこは子どものとき暮らした街だった。
不思議なタイムスリップの世 界に迷い込んだ真次は、そこで父親の本当の姿を発見する。
それは必死で働いて親に仕送りをするけなげな少年であり、戦場で女や子供を救う英雄であり、戦後の混乱の中を生き抜くたくましい男だった。
父親と息子の葛藤(かっとう)のドラマに誰もが感動の涙を流すことだろう。