読書の旅の羅針盤

ここ「読書の旅の羅針盤」では、小金井市小金井第一中学校校長
「山本 修司」がお勧めする中学生に
読んでもらいたい本を101冊紹介しています。

なお、この紹介は「学校便り」に紹介されているもので、
山本校長の許可を頂き掲載しているものであります。



ナンバー 書籍名 著 者 コメントなど
:短時間で楽しめる本   ★★:じっくりと味わえる本   ★★★:ちょっと難しいが視野が広がり人生観が深まる本
 2007年10月15日分
076 スピルバーグのアメージング・ストーリー(1・2)
(新潮文庫)
スティーブン・バウアー
★(初級)
アメリカのテレビ番組に「トワイライト・ゾーン」や「世にも不思議なアメージング・ストーリー」など、
恐怖とサスペンスとユーモアと不思議がギッシリつまった短編ドラマのシリーズものがある。
私は大好きでこれまでにビデオもほとんど見た。
本書はその小説版であり、奇想天外な展開と結末に大いに楽しめる作品ばかりである。
特に第2巻の「時は金なり」は興味深くて私は何度も読み返した。
077 シャーロック・ホームズの冒険
(新潮文庫)
コナン・ドイル
★★(中級)
 名探偵ホームズは、永遠のヒーローの一人である。
小学生のころに読んだ人も多いと思うが、大人になって完訳版を読み返しても面白い。
ホームズの天才的な観察眼と推理力に舌を巻きながら、秋の夜長を読書の楽しみにふけるのは、ささやかな幸福というべきだろう。
それにしてもどうしたらこんなアイディアとストーリーが考えつくのだろうか。
コナン・ドイルの天才ぶりには感心するばかりである。
078 アクロイド殺し
(ハヤカワ文庫)
アガサ・クリスティ
★★(中級)
 膨大な傑作ミステリーを残したアガサ・クリスティであるが、特にこの作品は、真犯人がびっくりするような人物であることで名高い。
読み終えて、結末にあっと驚き、思わずもう一度最初から読み返して納得する人も多いらしい。
しかし私は、半分くらいまで読んだところで真犯人がわかってしまったのだ(自慢)。
果たして君は何ページ目で犯人がわかるか? 挑戦してみよう。
079 グリーン・マイル(1〜6)
(新潮文庫)
スティーブン・キング
★★(中級)
 その作品のほとんどが映画化されていることでも有名なミステリー作家、スティーブン・キングの代表作である。
私はキングのファンで、ほとんどの作品を読んでいるのだが、この作品はテレビでも見て感銘を受けた。
超能力をもつ死刑囚の純粋な魂に涙がこぼれた。他にも中学生へのお薦めの作品としては「スタンド・バイ・ミー」がある。
080 点と線
(新潮文庫)
松本清張
★★(中級)
 日本を代表する推理小説作家と言えばこの人である。
大変苦労をした人で、41歳のときに「西郷札」で直木賞候補になり、44歳のときに「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞した。
本屋にいくと膨大な作品群が本棚にならんでいるが、さしあたって、日本のミステリー入門編としてこの一冊を読んでおくのがいいだろう。
列車時刻表を駆使したトリックの伝説的作品である。
 2007年11月12日分
081 アルジャーノンに花束を
(早川書房)
ダニエル・キイス
★★(中級)
 幼児の知能しかもたない32歳の主人公が、科学の力によって天才に変身した。
だがそれは、これまで他人を疑うことを知らなかった純粋な魂の主人公が、
邪悪さに満ちた人間社会の真実に気付いてしまうという悲劇の幕開けだった。
「全世界が涙した現代の聖書」と紹介されているが、まさに衝撃的で感動的な小説である。
人間の本当の幸せとは何なのかということを考えずにはいられない作品だ。
082 さぶ
(新潮文庫)
山本周五郎
★★(中級)
「さぶ」と「栄二」という江戸下町に生きる若い二人の職人の友情の物語。
盗みのぬれぎぬを着せられた栄二は、復讐を誓いながらも人生を転落していこうとする。
純粋で誠実な人柄のさぶは、親友の無実を信じ、ひたむきに支えようとする。
そして栄二を待ち続けるおすえの純愛。主人公たちに共鳴して読み進めると、最後にあっと驚く真実が明らかにされる。
面白さと感動が両立する小説は世の中にそれほど多くはないが、山本周五郎という作家の作品のほとんどはそれが実現されている。
この作家の作品は大人向けのものが多い中で「さぶ」は中学生にもお薦めできる作品である。
083 聖(さとし)の青春
(講談社文庫)
大崎善生
★★(中級)
 将棋の世界で史上最強の人といえば羽生善治である。
だが、かつて羽生と対等(6勝7敗!)に戦った若い天才棋士がいた。
しかし残念ながら、重い腎臓病で29歳という若さで人生を終えてしまう。
その天才の名は「村山 聖」。
家族や師匠に愛され見守られながら将棋に打ち込んだ壮絶な人生は、恐ろしいほどの気迫に満ちている。
と同時に、私たちに、一つの道に努力することの崇高さを教えてくれる。
マンガ化・ドラマ化・舞台化もされている感動のドキュメントである。
084 精霊(せいれい)の守人(もりびと)
(新潮文庫)
上橋菜穂子
★(初級)
正直言って私は「ファンタジー」が苦手である。
だが、学校図書館の生徒たちの貸し出しカードを見ると、何とファンタジー小説が多いことか。
そこで意を決してこの作品を手にしてみた。
結果は・・・意外に面白かった! 
特にこの物語の舞台が、古代の日本を想像させる場所になっているところがいい。
外国ものと違ってイメージがわきやすいからである。
「カードゲームを文字にしたような作品とはモノが違う」と小説家の恩田陸さんが作品の質の高さを保証している。
さもあらんと納得した。
085 若き数学者のアメリカ
藤原正彦
★★★(上級)
 筆者は教育や文化の問題で重要な提言をし続ける数学教授である。
ベストセラー「国家の品格」で有名になる前に、私はさるパーティーの席で親しくお話をさせていただいたことがあった。
講演での発言の過激さとは裏腹に、実にシャイな方であった。
彼は30歳の若さでアメリカのコロラド大学の助教授となった。
本書はそのときの3年間のアメリカの滞在をもとにした体験記である。
アメリカの若者と日本の若者の感性や生活の違いが浮き彫りにされて興味が尽きない。
視野が一気に広がる本である。
 2007年12月10日分
086 青春デンデケデケデケ
(河出文庫)
芦原すなお
★★(中級)
 ベンチャーズやビートルズが世界中の若者たちから絶大な人気を得ていた1960年代の物語。
エレキギターに魅せられてバンドを作った高校生たちの情熱と友情を描いた傑作青春小説である。
ユーモアあふれる表現のあちこちに深い人間洞察が感じられる文体は夏目漱石の「我輩は猫である」を連想させる。
若者が気軽に書きつづったような文体を装っているが、実は計算しつくされている。うまい。ぐいぐい引き込まれてしかも感動を呼ぶ。面白い!読むべし!
087 スローカーブをもう一球
(角川文庫)
山際淳司
★★(中級)
 例えば甲子園でのたった一球がその後の人生を大きく支配してしまうことがある。
スポーツとは現代の人間にとってそれほど大きな意味を持っているのだ。
本書は「野球」「バドミントン」「カヌー」「棒高跳び」など様々なスポーツに人生のエネルギーを注ぎ込んだ人々の情熱をドラマチックに描いたドキュメンタリー集。
どれもが迫力に満ちた物語ばかりである。
生きることとスポーツの関係を、単なる解説ではなく、迫真的なドラマとして描き、読者を圧倒する。そして共鳴させる。
088 プロジェクトX リーダーたちの言葉
(文春文庫)
今井 彰
★★(中級)
 NHKテレビ「プロジェクトX」で紹介されたすごい人々の中から、特に大きなリーダーシップを発揮した人を選んで、その勇気と情熱にあふれた生き方を紹介した。
先日、本校に招いて3年生がお話を伺った「伝説の消防士」小金井消防署の高野署長もその一人として名を連ねている。
地位やお金や名誉とは関係なく、一つの仕事に全人生をかけて取り組むことの素晴らしさを教えてくれる本だ。
089 蹴りたい背中
(河出文庫)
綿矢りさ
★★(中級)
 主人公の女子高生はなぜか周囲の雰囲気に同化することができない。
協調性のなさから、自ら進んで孤独を招いてしまう。そしてその孤立感に耐える日々が続いている。
ところがある日、クラスの中に自分をはるかに超える変人男を発見した・・。
研ぎ澄まされた感性を持つ女子高生の屈折した孤立感の描き方が見事である。
作者は史上最年少の芥川賞作家。17歳のときのデビュー作「インストール」と併せて読んだが、まさに天才の衝撃的な登場だと感じた。
090 太平洋ひとりぼっち
(福武文庫)
堀江謙一
★★(中級)
 今から45年前、一人の青年が、小さなヨットに乗って太平洋を渡ってアメリカ大陸に到達した。
日本人として初めての快挙であり、サンフランシスコ市民からは大歓迎を受けた。
これは大冒険に挑戦した若者の情熱あふれた記録である。嵐にほんろうされる木の葉のようなヨット。
はらはらしながら読み終えて、自分もまた90日をかけて太平洋を渡ったような達成感を味わうことができる。
 2008年01月18日分
091 僕は涙の出ない目で泣いた
(扶桑社文庫)
川畠成道
★★(中級)
 天才バイオリニストとして国際的に評価されている川畠成道さんの自伝である。
彼は8歳のときに薬害で視力を失ってしまった。
以来、両親の献身的な支援を受けながらすべてのエネルギーをバイオリンに注ぎ続けた。
その家族愛と音楽への情熱に感動せずにはいられない。私は2回泣いた。最初は本を読んだときだ。
2回目は本を読み終えてから店に走ってCDを買ってきたときだ。その世にも美しいバイオリンの音色を聴いて、中畠さんの魂に直接触れたような気がして涙がこぼれたのである。
まことに音楽とはすばらしい。読むべし。聴くべし。
092 ミクニの奇跡
(新潮文庫)
松木直也
★★(中級)
 フランス料理の名人として有名な三國清三さんの半生記である。
15歳のときに一流の調理師になる夢を抱いた彼は、調理師学校を終えると強引に札幌グランドホテルに頼み込んで就職した。
そしてだれよりも熱心にピカピカに鍋を洗い、仲間の何倍も料理の勉強に打ち込んだ。
そして帝国ホテル、スイスの日本大使館、フランスの三つ星レストランなどで腕を磨いた彼は、ついに世界が認める一流シェフとして現在の地位を築いたのである。
まるで豊臣秀吉のような痛快な立身出世物語である。私たちの身の周りには、自分の夢を実現するための大きなチャンスがあふれている。
ただそのことに気付かないで、努力する時機を逃している人が多すぎるのだ。
そんなことをこの本は教えてくれる。
093 捕鯨船団 女ドクター南氷洋を行く
(集英社文庫)
田村京子
★★(中級)
  「どくとるマンボウ航海記」の女性版である。昭和59年10月、第39次南氷洋捕鯨船団の母船「第三日新丸」(2万3千トン、総員252名)は、4隻の捕鯨船(総員79名)を引き連れて7か月に及ぶ大航海に出発した。
捕鯨に対する国際的な批判の高まりの中で、日本でただ一隻残った捕鯨母船だった。
そのとき、戦場のような男の世界に史上初めて一人の女性が乗り込んでいたのである。
それが医者の田村京子さんだった。病人やけが人が続出する中で奮闘する日々をつづった文章は、とても読みやすく、筆者の行動や気持ちが手にとるように伝わってきて共鳴する。
海の男たちから女神のように慕われた筆者が、長い航海を終えて帰国したときに船員たちと別れる場面では、もらい泣きをせずにはいられない。
094 面白くても理科
(講談社文庫)
清水義範
★★(中級)
 清水義範氏の作品はどれもがユーモアにあふれている。
しかし、ふざけているようで実は人生の真実や矛盾点を鋭く指摘している作品が多い。
例えば「国語入試問題必勝法(講談社文庫)」は、全編冗談のように書かれているにもかかわらず、国語教師の私が思わず「なるほど」とうなずいてしまったくらいだ。
しかし彼の作品はあまりにも奇想天外すぎて、中学生には少し刺激が強すぎるかもしれない。
その中でこの「面白くても理科」は断然お薦めの作品である。
「慣性の法則」「時間とは何か」「環境破壊と人類滅亡」等の真面目なテーマについて、実に楽しく語っているのである。
西原理恵子のイラストも爆笑ものだ。これを読んで、もっともっと理科を好きになろう。
095 頭の体操 1〜
(知恵の森文庫)
多湖 輝
★(初級)
 これは単なるクイズの本ではない。日常生活で私たちの頭は平凡な常識で凝り固まっている。
それを打破したとき、初めて物の本質がはっきりと見えてくる。その驚きと感動を繰り返して教えてくれる本なのだ。
作者は大学教授にして「クイズの神様」である。はるか昔、高校生の私は、次々と出版される本書のシリーズを買ってきては友達と競争しながら夢中になって解いた。
現在私は、ある会議で多湖先生と定期的にお会いしている。初めてお目にかかったとき「授業の最初にクイズを出したら生徒は喜ぶでしょうね」と私が言ったら
「いやいや、クイズよりマジックの方が受けるよ」とおっしゃるのでびっくりした。同時に発想の柔軟な人なのだと感心したものだ。
長年クイズで頭を鍛えてきたからだろう。
 2008年02月11日分
096 イチロー物語
(中公文庫)
佐藤 健
★(初級)
  「イチロー」は世界のスーパーヒーローである。
その誕生の背景には、大きな夢を抱く我が子に対して驚くほど的確に支援する家族の存在があった。
本書は、イチローがプロチーム入団3年目にして200本安打という大記録を打ち立てた直後に書かれたものである。
小学校時代からプロになるまでのイチローの姿が描かれている。親が読んで子育ての参考にするべき本であるとも思う。
097 ラヴレター
(角川文庫)
岩井 俊二
★(初級)
 この作品は映画として10年ほど前に公開された。それを監督自身が小説化したロマンチックな物語である。
主人公の女性は、山で死んだ恋人の中学校時代のアルバムから、彼の昔の住所を知った。
そしてほんのいたずら心でその住所あてに手紙を出す。ところが死んだはずの彼からなんと返事が届いた。
そして文通をするうちに、次第に今は亡き恋人の中学校生活が明らかになってくる。
それはいかにも中学生らしい純粋さに満ちあふれた恋の物語だった。気軽に楽しめる作品である。
098 落語的学問のすすめ
(新潮文庫)
桂 文珍
★(初級)
 再び書く。日本はユーモアの先進国である。その証拠として落語という伝統文化が脈々と続いている。
その落語家が大学からスカウトされた。文学部の学生に対して週に一回講義をやれというのだ。
さてどんな授業になったのだろうか。本書はその授業をそのまま活字にしたものである。全編笑いにあふれている。
これも勉強の合間に気軽に楽しめる本だ。
099 タイムマシン
(角川文庫)
H・G・ウェルズ
★★(中級)
 「空想科学小説」というジャンルがある。H・G・ウェルズはそのジャンルの神様である。
彼の描く世界は決して荒唐無稽な想像の産物ではない。科学的な説明には説得力があり、人間存在の根本的意義を問う哲学的考察に満ちている。
本書はタイムマシンを発明した男が目撃した、80万年後の未来社会のレポートである。
その中で作者は人類の悲劇的な末路を鮮やかに描いている。
百年前に書かれた小説なのに、その文明批評は今なお新しく鋭い。読者の胸に突き刺さってくる。
100 北の国から (上・下)
(理論社)
倉本 聰
★★(中級)
 私の長い人生の中でもっとも感動したテレビドラマは「北の国から」である。
妻に裏切られた男が二人の幼い子どもを連れて郷里の北海道に帰り、電気も水道もない山中の家で暮らし始める。
なんと絶望的な状況設定だろう。しかしその土地には、都会生活で現代人が失ったものが沢山存在していた。
自給自足の生活を通して家族愛や正義や友情などを描く人間ドラマに私は感動した。
人間にとって本当に大切なことは何かを教えてくれる素晴らしいドラマだった。私の家族全員がこのドラマのファンになった。
夏休みに家族全員で北海道の富良野に行き、ロケ地跡を見学してくるほど熱中した。この本はそのドラマのシナリオである。
かつて国語の教科書に掲載されていたとき、私は涙があふれてきて授業ができなくて困ったものだ。
「親子で読みたい本」の第1位としたい。
101 火の鳥2 未来編
(角川文庫)
手塚 治虫
★★(中級)
  「えっ、マンガでもいいの?」 良くないのである。読書とは、頭の中で活字を映像や心情に変換する行為だ。
言わば脳みその格闘技である。だから本を読むほどに思考力や想像力はびしびしと鍛えられる。
しかし最初から映像が与えられるマンガやテレビや映画はそうはいかない。
とはいえ今の世の中には質の高いマンガがあふれているのも事実である。そこで特別に一冊だけ加えたい。
私が選んだのは、天才手塚治虫の代表作「火の鳥(全13巻)」である。その中でも特に「未来編」を推す。
ある日核戦争によって地球の全生物が絶滅した。そのとき火の鳥は一人の男に永遠の命を与え、地球復活を命じた。
そして30億年の月日が・・・。何というスケールの大きさだ。頭を思い切り殴られたようなショックとともに不思議な感動がわき上がってくる作品である。