読書の旅の羅針盤

ここ「読書の旅の羅針盤」では、小金井市小金井第一中学校校長
「山本 修司」がお勧めする中学生に
読読んでもらいたい本を101冊紹介しています。

なお、この紹介は「学校便り」に紹介されているもので、
山本校長の許可を頂き掲載しているものであります。



ナンバー 書籍名 著 者 コメントなど
:短時間で楽しめる本   ★★:じっくりと味わえる本   ★★★:ちょっと難しいが視野が広がり人生観が深まる本
 2006年11月10日分
025 流れる星は生きている
(中公文庫)
藤原 てい
★★
 先の戦争に負けたとき、中国大陸にはおびただしい数の日本人の
女性や子供やお年寄りが取り残された。
食べ物も十分に手に入らない絶望的な状況の中で、彼らは互いに励まし合いながら朝鮮半島を縦断し 1年以上の歳月をかけて日本に戻ってきたのであった。
3人の幼い子どもを必死で守りながら日本にたどりついた著者の愛情の深さと強い意志に感動せずにはいられない。
026 アンネの日記
(文集文庫)
アンネ・フランク 
★★★
 13歳になったばかりのアンネ・フランクは、は、ナチスドイツの手を
逃れた隠れ家の中で希望を失うことなく豊かな感性と鋭い洞察力で
日々の出来事や心情をつづっていく。架空お親友にあてた手紙という形で
つづられた2年間の日記はまさに奇跡の書というべきだろう。
そして読者は戦争や人種差別の悲惨さや愚かさを痛感するだろう。
若者の必読の書である。
027 出口のない海
(講談社文庫)
横山 秀夫 
★★
 本書は人間魚雷「回天」に乗り込んだ、甲子園の優勝投手を主人公とする
物語である。敗戦直前の日本は最終兵器である特殊機と人間魚雷で
アメリカに立ち向かい、多くの若者が死んでいった。
私はかつて靖国神社の一角にある「遊就館」で魚雷の実物を見、
出撃前の学生の生の声を聞いて声を失った。
このような悲惨な事実があったことを私たちは忘れてはならないと思う。
028 坂の上の雲
(文集文庫 全巻)
司馬 良太郎 
★★★
 上の3冊が戦争の犠牲になった人間の悲惨さを描いたものであるのに対して、
それとは違った視点から歴史と戦争を見つめた本である。
百年前、日本は超大国のロシアに戦いを挑んだ。司令官の稚拙な作戦のせいで
甚大な戦死者を出しながらも、紙一重で勝利を収めたことが今の日本の
基礎になっていることに改めて驚く。この時点で日本という国家は
滅びていたのかもしれないのだ。国のリーダーたちの役割と責任が
いかに大きいかを考えさせられる。
 2006年12月10日分
029 鈴の鳴る道
(詩画集)
(偕成社)
星野 富弘 
 星野富弘さんは中学校の体育科の先生だった。生徒に跳び箱の難しい技の
手本を見せているときに空中からマットに落下して首を強打し、
下半身不随になってしまった。絶望の中で星野富弘さんは口に絵筆をくわえて
美しい植物の絵を描き始めた。それらの絵の美しさと添えられた言葉に込められた
人生観の深さに胸を打たれずにはいられない。私は実際の作品が見たくなって、
ある日、群馬県の星野富弘美術館にでかけた。そして展示された作品を
目の前にして感動の涙が止まらなかった。自分の命と人生を
もっともっと大切にしなければと思った。
030 木を植えた男
(絵本)
(あすなろ書房)
ジャン・ジオン原作
フレデリック・バック絵

 これは大人が読むべき絵本である。生涯をかけて荒れ果てた山に木を植え続け、
ついには豊かな森林を作り上げた一人の男の人生が描かれている。
その生き方は読者に深い感動を与えるとともに、人はどう生きるべきか
という強いメッセージとなって伝わってくる。まさに中学生が読むのにぴったりの絵本である。
031 九月の空
(角川文庫)
高橋 三千網
★★
 昭和53年の芥川賞受賞作品。中学校から高校にかけて剣道に励む
少年の心情を描いた作品である。15歳の主人公にとって、この世で最も
信用できることは剣道をしている最中に感じる緊張感だった。
思春期の純粋な心の揺れをさわやかに歌い上げた青春小説だ。
今、一生懸命部活動にエネルギーを注いでいる中学生ならば、読んでいて
共鳴する場面が沢山あるに違いない。
032 夜のピクニック
(新潮文庫)
恩田 陸
 今年の秋に映画化された、人気作家の描くさわやかな青春小説である。
高校生活最大のイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロの
道のりを歩き通すという過酷な伝統行事である。主人公の女子高生は
その一日に3年間だれにも明かさなかった秘密に決着をつけようと決意して
親友と共に歩き出す。そしてささやかな奇跡が起こる・・・。
読み終えた後のすがすがしさ!。
 2007年01月17日分
033 1リットルの涙
(幻冬舎文庫)
木藤 亜也 
 私は読み終えるまでに何度も涙を流した。それは「かわいそう」という
同情の涙ではなく「生きようとすること」への共鳴の涙だった。
優しい家族や友達に囲まれて幸せな生活を送っていた15歳の少女が不治の病に冒された。
時間とともにしだいに動かなくなる体。しかし生きる少女は生きる希望と夢をあきらめない。
「失ったものより残されたものを大切にする」と自分に言い聞かせながら、
悲しみや絶望から必死に立ち上がろうとするのだ。
この本を読むすべて人が生きる勇気を与えられるだろう。
034 奇跡の人
ヘレン・ケラー自伝
(新潮文庫)
ヘレン・ケラー
小倉 慶朗訳

★★
 「奇跡」とは何か。私はこの本を読むまで大きな誤解をしていた。目も耳も不自由で
暗闇と沈黙の住んでいた7歳のヘレンケラーが、ある日突然「言葉」の存在に気づいた。
それが「奇跡」だと思っていたのだ。しかし、それは「奇跡」の人生の幕開けに過ぎなかったのだ。
彼女はその後、水を吸い込むスポンジのようにあらゆる知識を吸収し、
声を出して話すことも可能にし、ドイツ語、フランス語、ラテン語なども堪能になり、
数学や物理の勉強にも励み、ついにはアメリカの最高の難関大学「ハーバード大学」に
実力で合格するのである。努力の足りないすべての中学生諸君、
この本を読んで感動すべし!! この努力を見習うべし!!
035 佐賀のがばいばあちゃん
(徳間文庫)
島田 洋七
 壮絶な貧乏生活である。何しろ川に流れてきた野菜を拾っておかずにしているぐらいだ。
だが、「お金なんかなくても、気持ち次第で明るく生きられる!」と、ばあちゃんは
底抜けに明るい。家庭の事情で幼くして母と別れた著者は、たくましいばあちゃんや
思いやりのある友達や先生に囲まれてのびのびと育つ。
考え方一つで世の中からすべての不幸が消えてしまいそうな、楽しくてしかも感動的な自伝である。
036 サラダ記念日
(河出文庫)
俵 万智
 短歌界に革命を起こした若い女性の恋の歌集である。恋をしている読者は
共鳴するだろう。まだ恋をしらない読者はその日を思い描いてどきどきするだろう。
老いたる読者は若き日の心のときめきをよみがえらせるだろう。
そして。この歌集を読み終えたすべての人が、これまで何気なく通り過ぎてきた
日常生活の一瞬一瞬が、限りなくいとおしく感じられるようになるだろう。
「会うまでの時間たっぷり浴びたくて各駅停車で新宿へ行く」うーん、わかるなあ。
037 谷川 俊太郎詩集
(集英社文庫)
谷川 俊太郎
 私は自分を天才詩人だと思っていた。文学好きな友達と一緒に手作りの雑誌に
詩や小説を書いていた高校生のころだ。青春時代にありがちな大きな錯覚であった。
しかし、谷川俊太郎という本当の天才の作品に出会って、その愚かな誤解は
たちまち消滅した。その日から私は詩を作ることをやめた。どのページでもかまわない。
ぴりりと何かを感じた作品があったら声に出して読んでみよう。絵画と音楽と
思想が溶け合ったような、不思議な文学の世界を味わうことができるだろう。
038 女子中学生の小さな大発見
(新潮文庫)
清 邦彦
 大発見!「Hさんの家の犬はリコーダーの高いラの音かシの音で共鳴します。」
「Kさんは氷を浮かべた水にサラダ油を入れてみました。氷と水の境目に
浮いていて『水より軽く油より重い』ことがわかりました。」等々、
中学生たちの自由研究のレポートの要点を簡単に紹介した本である。
ただそれだけなのに、どのページも読んでいてとてもわくわくする。
もし私が中学生のときにこの本に出会っていたら、きっと理科が好きになり、
研究者への道を歩んでいたに違いない。
 2007年02月16日分
039 細川ガラシャ夫人
(新潮文庫)
三浦 綾子
★★★
 戦国時代の物語だが、主人公は女性でしかもクリスチャンである。
一般的に豊臣秀吉や織田信長などの英雄が活躍する小説には、
戦いを殺人=悪として否定する視点はほとんどない。その理由は、英雄物語は
人間の歴史を巨視的に描く必要があるからだろう。しかしそれでよいのだろうか。
中学生にとっては、本書のように英雄の視点とは違う目で人間の歴史を描いた
小説を読んでおくことも有意義なのではないかと私は考える。加えてこの作品では、
主人公の父親である明智光秀を知的で立派な人物として描いていることも興味深い。
このような本を読むと日本史の授業がいっそう面白く感じられるのではないか。
040 隠し剣秋風抄
(文春文庫)
藤沢 周平
★★
 私は藤沢周平のファンである。とにかく登場する主人公がみな清廉で、
その潔い生き方がたまらなく美しいのだ。簡潔な自然描写もまた
イメージが鮮やかで、まるで一篇の詩を読んでいるような気になる。
私はこの作家の描く江戸時代が大好きだ。だから作品集をわざと
ゆっくり読み進めている。それなのに、すでに半分以上の作品を読み
終えてしまった。ああ、もったいない。
さて、本書は木村拓哉主演の映画「武士の一分」の原作を含む短編集である。
私は映画をまだ見ていないのだが、本だけでもあんなに感動したのだから、
映画を見たら絶対に涙ぼろぼろに違いない。
中学生のうちに藤沢周平の作品を読んで、江戸時代の生活や感性に
触れておくことは有意義だと思う。ただし昔の言葉が沢山出てくるので、
辞典をそばに置いておくのを忘れずに。
041 ボクの音楽武者修行
(新潮文庫)
小沢 征爾
★★
 指揮者って簡単そうだ。棒を振っているだけだもの。子どものころに
そんなことを考えたことがあった。それは大きな誤解だった。
指揮者とは、すべての楽器のすべての音を正確に把握する。
とてつもない能力を必要とする仕事なのであった。大学で音楽を学んだ著者は
24歳のときに単身欧米に武者修行に出かけた。そして国際指揮者
コンクールで次々に優勝し、世界のひのき舞台で活躍するようになるのだ。
わくわくするような天才の栄光の青春物語である。
042 ショートショートの広場(1〜)
(講談社文庫)
星 新一監修
 小説の楽しみは読むことばかりではない。自分で書くという楽しみもある。
この本は、ショートショートの神様である星新一が、一般人の作品から
優秀作を選んで編集した本である。奇想天外な発想とあっと驚く
結末の作品ばかりで、読み始めると時間のたつのを忘れてしまう。
そして読んでいるうちに、自分でも書けそうな気がしてくるから不思議だ。
勉強の気分転換にこの本を読んで、たまにはショートショートを
書いてみるのも面白いのではないか。
043 落語百選(春〜冬)全4巻
(ちくま文庫)
麻生 芳伸編
★★
 日本はジョークの先進国である。例えば落語という日本の民衆の
誇るべき文化がある。この本は「まんじゅう怖い」「長屋の花見」などの
落語の名作・傑作をずらりと並べた台本集である。名人たちの語り口が
聞こえてくるようである。庶民の生活を温かい視線でユーモラスに
描く精神を伝承していくためにも、私たちは、もっと落語を見たり聞いたり
しておくことが必要なのではないか。そう思って私は1年に1度は寄席に行く。
最近では笑福亭鶴瓶の新作落語がとてつもなく面白かった。
044 日本の技術(ワザ)は世界一
(新潮文庫)
毎日新聞経済部
★★
 日本には、世界一品質が良いと評価されている製品が沢山ある。
この本は、そのような世界一の日本のワザの中から100種類を
選んで紹介したものである。例を挙げると「眼鏡レンズ(HOYA)」
「ヘルメット(アライ)」「カッターナイフ(オルファ)」「プラネタリウム(五藤光学)」
「電子ピアノ(ローランド)」「小型モーター(マブチ)」「フルート(村松)」等々。
日本人の技術力の優秀さに驚くとともに、世界の人々の生活を豊かに
することへ貢献しているという国への誇りを改めて感じさせる本である。
 2007年03月14日分
045 こころ
(角川文庫他)
夏目 漱石
★★★
 夏目漱石が、初めて小説「吾輩は猫である」を発表したのは38歳のときだった。
以来49歳でなくなるまでに多くの傑作・名作を残した。私は高校生のときに
漱石の全作品を読もうとしたのだが、「坊ちゃん」と「こころ」の2冊以外は
歯が立たなかった。しかし、自分が漱石が執筆したころの年齢になったときに
再挑戦し、全作品を読破した。そのときの達成感は大きく、人生観が深まった
ような気がした。「こころ」は友人を裏切って死に追いやった男の苦悩を掘り下げ、
人間のエゴイズムを追求した作品である。
文豪夏目漱石の入門編として、若いうちにはぜひ一度は読んでおきたい。
046 高瀬舟・寒山拾得
(角川文庫他)
森 鴎外
★★
 漱石と並ぶ日本の文豪といえば森鴎外である。弟殺しの罪で島流しに
されようとする男がなぜ幸福そうな態度でいるのか、その理由を追求した「高瀬舟」。
二人のお坊さんの俗世間を超越した姿を描いた「寒山拾得」。
いずれの小説も、私たちが日ごろ何気なく心に抱いている幸福感が
突然撃ち壊されたような不思議な読後感が残る。
047 藪の中・地獄変
(新潮文庫他)
芥川 龍之介
★★
 芥川龍之介の作品はどれも短い。しかしいずれも深いメッセージが込められている。
そしてそのメッセージは読者の心に刻み込まれ、人生の様々な場面でふっと浮かんでくる。
私は学校に上がる前に絵本で「蜘蛛の糸」を読んだときのショックをまだ忘れてはいない。
そのとき学んだ「利己主義は自分を破滅させる」という教訓は何十年たっても
生き続けているのである。そのような芥川の作品の中でも特に「藪(やぶ)の中」
「地獄変」の2編は、衝撃度が非常に大きい。
048 芽むしり仔撃ち
(新潮文庫)
大江 健三郎
★★★
 大江健三郎はノーベル賞作家である。しかし文章は難解で、テーマも大人向きの
ものが多い。中学生が読むのにちょうど良い作品を選ぶのが難しいのだが、
ここではこの1冊を紹介する。
 少年院の子どもたちが戦争中に山村に疎開させられる。ところが、その村で
恐ろしい伝染病が発生すると村人たちは少年たちを置き去りにして逃げ去ってしまう。
生き延びるために少年たちがとった行動とは?
非情な大人たちと必死で戦う少年たちの物語が興味深い。だが、それ以上に読者は、
村の情景や子どもたちの心情を細やかに表現する文学の香り高い文体に
圧倒されるのではないだろうか。
049 潮騒
(新潮文庫)
三島 由紀夫
★★
 これほど純粋無垢(むく)な青春文学がほかにあるだろうか。
太平洋を望む「歌島」の若い漁師の信治と海女(あま)の初江の二人の理想的な
恋の物語は映画にもなった。かつての中3の国語の教科書には、
有名な「その火を飛び越してこい」という場面が載っていた。生徒は国語の授業で
感動の愛のシーンを味わったのである。若者必読の永遠の名作と言って良いだろう。
この冬休みに三重県にあるこの島のそばをフェリーで通ったとき、
私はなぜか懐かしい気持ちでいっぱいになったものだ。
050 名人伝・山月記
(新潮文庫他)
中島 敦
★★
 中島敦は、わずか20編ほどの短編小説を残し34歳で早世した作家である。
しかし漢文調のその文体は格調が高く、傑作と讃えられる作品が多い。
「名人伝」は、修行を重ねて天下の弓の名人になった記昌(きしょう)の物語である。
さらに道を究めようとして修行に打ち込んだその果てに、驚くべき結末が待っていた。
「山月記」は、才能があるのに他人と切磋琢磨(せっさたくま)することを避けた詩人、
李徴(りちょう)の悲劇を描いた物語。「臆病な自尊心」がすべての原因だった。
そしてその「臆病な自尊心」が肥大し続けた結果、ある日突然、李徴は虎に
変身してしまう・・・。2編とも、人間はどう生きるべきかということについて
教えられる作品である。